人間の怨念を背負い、化け猫になった猫の悲しい物語
佐賀に伝わる「鍋島の化け猫騒動」。史実を背景に生まれた怪談を、猫と暮らすねこの目線から考えてみました。
おはようございます。。ねこです。
日本には、昔からたくさんの化け猫伝説があります。
その中でも特に有名なのが、佐賀に伝わる「鍋島の化け猫騒動」です。猫好きの方じゃなくても一度は聞いたことがあるタイトルなのではないでしょうか。
内容をざっくりと説明すると、権力者に殺された男。その死を嘆き、飼い猫に無念を語って自害する母。そして、その血を舐めた猫は化け猫となり、飼い主の恨みを晴らそうとします。
こう書くと、かなり怖い怪談ですよね。
でも、この話を読んだねこが一番気になったのは、化け猫の怖さではありませんでした。
「この猫、人間の恨みに巻き込まれて、最後には退治されちゃうんだ……」
そう思ったら、なんだか可哀想でならなくなってしまったのです。
鍋島の化け猫騒動とは?
まずは、「鍋島の化け猫騒動」がどんな物語なのか見てみましょう。
ただし、このお話にはいくつかの異なる形が伝えられています。登場人物や舞台にも違いがあり、ここでは佐賀に伝わる代表的な筋書きを中心に紹介します。
囲碁をきっかけに起きた悲劇
物語に登場するのは、鍋島家の藩主と、龍造寺家の又七郎。
又七郎は囲碁の名人で、藩主と碁を打っていました。
ところが、何度打っても勝てない藩主が激昂し、ついには又七郎を斬り殺してしまったといいます。
今なら、「囲碁に負けたからって人を殺すな!」と言いたくなる話です。どんだけ勝気なんだよ。周囲もそんな藩主の性格を知ってるんだから、弱い人と戦わせろよ!って思います。
でも、物語の中では、権力を持つ者のくだらない怒りによって、一人の人間の命が奪われてしまいます。
息子を失った母が、飼い猫に無念を託す
息子の死を知った母親は、深い悲しみと怒りに襲われます。
そして、自分が可愛がっていた猫に、息子を失った悲しみや鍋島家への恨みを語ったあと、自ら命を絶ってしまいます。
流れた母親の血を舐めた猫は、その後、姿を消しました。
ここから、この物語は一気に怪談になっていきます。
猫は巨大な化け猫となり、飼い主の無念を晴らすため、鍋島家へ復讐を始めるのです。

猫には昔から、どこか人間にはわからない不思議な力があるように語られてきました。
「猫ってやっぱり不思議」と思う話は、こちらでも紹介しています。
▶ 【猫ってやっぱり不思議】思わずゾワッとする!?猫にまつわる7つのミステリー
化け猫はお豊の方を殺し、姿を変えた
飼い主の無念を背負った猫の復讐は、ここからさらに恐ろしいものになっていきます。
藩主が寵愛していた女性に成り代わる
化け猫は城へ入り込み、藩主が寵愛していたお豊の方を食い殺したと伝えられています。
そして、お豊の方の姿に化け、本人になりすまして城の中で暮らし始めます。

夜になると藩主を苦しめ、鍋島家への復讐を続けました。
考えてみれば、お豊の方にとっても、とんでもない話です。
又七郎を殺したわけでもなければ、母親を追い詰めたわけでもありません。
それなのに、人間同士の恨みの連鎖に巻き込まれ、命を奪われてしまう。もはや、もらい事故の世界。
復讐というものは、始まってしまえば当事者だけでは終わらない。
この怪談には、そんな怖さもあるように思います。
最後には正体を見破られ、猫も退治される
やがて家臣たちは、お豊の方に化けた怪猫の正体に気づきます。
そして、ついに化け猫は退治され、鍋島家には平穏が戻った――。
これが、「鍋島の化け猫騒動」として伝わる物語の大まかな筋書きです。
怪談として見れば、恐ろしい化け猫を忠臣が退治し、めでたし、めでたし。
……なのかもしれません。
でも、猫と暮らしているねこには、どうもそう思えないのです。
猫の怖い話や不思議な話が好きな方はこちらもどうぞ。
▶ 猫の怪談特集|3つの夜の物語:猫が紡ぐ怖い話、不思議な話、そして心温まる話
鍋島の化け猫騒動は本当にあった話なの?
ここまで読むと、「こんなことが本当にあったの?」と思いますよね。
ましてや、化け猫なんて…あんなに可愛い生き物が。昔は行燈の油に魚由来の油が使われることもあり、猫がそれを舐めるために後ろ足で立った姿が、化け猫のイメージにつながったともいわれています。
そして、行燈の光の加減で猫が躍っているような影が見えたのかもしれない…でも、それって、ねこにしてみたら、可愛すぎる。一緒に踊りたいくらいだわ。
話が横道にそれましたが、史実として起きたことと、後世に作られた化け猫の物語を分けて考える必要があります。
龍造寺家から鍋島家へ実権が移った歴史はあった
戦国時代の肥前では、もともと龍造寺氏が大きな勢力を持っていました。
しかし、1584年の沖田畷の戦いで龍造寺隆信が敗死したあと、重臣だった鍋島直茂が次第に実権を握るようになります。
その後、龍造寺家の高房は、自分が名目上の国主のような立場に置かれていることに苦しみ、1607年に自害を図ったのち亡くなりました。
父の政家も同じ年に亡くなり、やがて佐賀では鍋島家が藩主となっていきます。
つまり、龍造寺家から鍋島家へ権力が移っていったという歴史的背景そのものは存在します。
化け猫の復讐劇は、後世に作られた物語
一方で、囲碁に負けて又七郎を斬り殺したことや、母親の血を舐めた猫がお豊の方に化けて復讐したという話まで、史実として確認されているわけではありません。
龍造寺家の無念や鍋島家との関係を背景に、さまざまな伝承が生まれ、後世に怪談や芝居として形を変えながら広まっていったと考えられています。
つまり、本当にあった歴史の上に、人々の想像や思いが積み重なってできた物語なのです。
なぜ「化け猫」の物語として語り継がれたのだろう
ねこは、この話を調べながら、昔話や怪談が長く残っていく理由について考えました。
権力者の無茶ぶりを庶民が物語に残したのかもしれない
いつの時代にも、権力を持つ人の無謀な行動や理不尽によって、不利益を被る人がいます。
でも、その時代には正面から権力者を批判できないこともあったでしょう。
だから登場人物を変えたり、時代を変えたり、怪談や芝居という形にしたりしながら、市井の人たちの間で語り継がれていく。
有名な話では、忠臣蔵がありますよね。赤穂事件を題材にした『仮名手本忠臣蔵』も、実際の事件をそのまま描くのではなく、時代や登場人物を変えて物語にしています。それでも当時の人たちは、「これはあの事件のことだ」と察しながら見ていたのでしょう。
鍋島の化け猫騒動も、そんな物語のひとつなのかもしれません。
権力者の無茶によって命を奪われた人。
自分の義や思いを通そうとして不利益を受けた人。
そして、その無念がいつか権力者のところへ戻ってくる。
日本人が昔から好んできた怪談や芝居には、こうした構図がたくさんあります。
ただ、鍋島の物語では、その復讐をする役目を猫が背負わされました。

ねこには、化け猫になった猫が可哀想でならない
ここからは完全に、猫と暮らしているねこの気持ちです。
人間の恨みを、どうして猫が背負わなきゃいけないの?
息子を殺された母親が、どれほど悲しかったか。
それはねこには想像もできない苦しさ、辛さだったと思います。
怒りも、悔しさも、無念もあったでしょう。そして、自分の将来まで悲観してしまったのかもしれません。
でもね。
ねこはどうしても思ってしまうのです。
「そんなの自分でやれ!自害できる勇気があるなら自分が幽霊になって憑りついて殺せばいいじゃん!」
猫にやらせないでよ。
猫は何にも悪くないじゃない。
飼い主が大好きだったから、その思いを受け取ってしまったのかもしれない。
だから化け猫にまでなって、飼い主の無念を晴らそうとしたのかもしれません。
もちろん、これは物語です。
それでも、最後には「恐ろしい化け猫」として退治されてしまう猫のことを思うと、ねこには可哀想でならないのです。
猫はどんな思いで、化け猫になって殺されていったんだろう…。
猫が大好きな相手に見せる仕草には、今の猫たちにもたくさんの愛情が表れています。
▶ 猫が本気で好きな人にだけ見せる行動5選|信頼と愛情がわかるサイン
もし、ねこがこの猫の飼い主だったら
もし、ねこが自分の命を絶とうと考えていて、そばに大切な猫がいたとしたら。
まず、その子を最後まで大切にしてくれる人を探します。
ご飯を食べさせてくれて、病気になったら病院へ連れて行ってくれて、暖かいところで眠らせてくれる人。
そして、できることなら、ねこのことを忘れて幸せになってほしい。
自分の恨みなんて背負わせたくありません。
ましてや、復讐なんてしてほしくない。
猫は猫として、穏やかに生きてほしい。
時代が違うから、今のねこがそう思うだけなのかもしれません。
でも、人間同士の事情に巻き込まれ、最後には命まで失ってしまった猫を見ると、どうしてもそう思ってしまいます。
もし、ねこが、同じ目にあって飼っている花ちゃんが「復讐する!化けてやる!」って言ってくれても、
「お気持ちだけでありがとう」
っていうと思う。ま、花ちゃんがねこのために復讐するかっていうと、しないと思うけど(笑)
猫の最期や別れについて考えた記事もあります。
▶ 猫は「別れ」を予感するの?|姿を消す・寄り添う…最期の前に見せる不思議な行動
佐賀には今も「猫大明神」がある

物語の中では退治されてしまった化け猫ですが、佐賀県白石町には、この猫にまつわる場所が今も残っています。
秀林寺の「猫大明神」
佐賀県白石町にある秀林寺には、「猫大明神」と呼ばれる祠があります。
白石町によると、化け猫騒動に関係した猫を供養する意味合いのものだそうです。
ねこは、もし佐賀に行くことがあったら、ここを訪ねてみたいと思っています。
そして、猫大明神の前でこう言ってお参りしたい。
「ごめんね。人間に振り回されてしまって。生まれ変わったら、今度こそ最後まで大切に可愛がってくれる人の子になってね」
物語の中では「恐ろしい化け猫」として退治された猫。
でも、ねこにはどうしても、飼い主の無念や人間同士の恨みを背負わされ、最後には命まで失った一匹の猫に見えてしまうのです。
本当に怖いのは化け猫だったのかな

鍋島の化け猫騒動は、史実を背景にしながら、後世に怪談や芝居として形を変えて語り継がれてきた物語です。
権力を持つ者の理不尽。
そのために命や立場を失った人の無念。
恨みが新たな犠牲者を生み、最後には復讐した側も滅びてしまう。
そう考えると、これは単なる「怖い猫の話」ではないのかもしれません。
そして、猫と暮らすねこには、やっぱり最後まで化け猫が悪者には見えませんでした。
人間の恨みなんて、猫に背負わせなくていい。
猫には、ご飯を食べて、好きな場所で眠って、大好きな人に甘えて、一生を終えてほしい。
本当に怖いのは化け猫だったのか。それとも、そこまでの恨みを生んだ人間だったのか。そもそも、この話は「怖い話」なのか。
鍋島の化け猫騒動を知って、ねこはそんなことを考えてしまいました。
大切な猫との時間は、できるだけ幸せな形で残しておきたいもの。
オリジナルグッズを作って楽しむのもいいですよね。
ねこも、ちょっと悲しい気持ちになったので、ミミちゃんのTシャツとか、作っちゃおうかなと思っています。
今日もお付き合いいただきありがとうございました。
ではでは。
